2 ゴメンなさい、責任持ちます。20


 カルティアは、地上の小さな光を目指し、急降下した。そこはシ
ュウが駐在していた村だった。カルティアはフォンシャンの物であ
ったログハウスへとシュウを無言で引きずり込む。
「ちょっ、離してください! 痛い」
「そう騒ぐな。人の体はもろい物だとは聞いていたが、そのようだ
な」
 カルティアはそう言いながら手を空間に置いた。すると、そこに
椅子が産まれる。豪華な作りの椅子に座り、カルティアは目を細め
て言った。
「何か不可解そうな表情をしているが、お前から話すか? それと
も私から話すか」
 その表情、声色からは人間味、優しさが欠けているような印象が
した。
「えと……貴方は誰ですか。私はシュナイザー・ラスタ。この領内
のラスタ伯の実子です」
「そう言った肩書きは私には理解できないが、質問には答えよう。
私はこの星を司る聖天使」
 聞きなれぬ言葉に、シュウは眉を寄せる。
「せい、天使?」
「そうだ。幾つもの星が存在する中で、生物が住む星はごくわずか
だ。その星を監視する役目を負っている。星の均衡をとり、身勝手
な人間に裁きを下す」
 カルティアはそう言って、シュウに指を向けた。すると、汚れた
シュウの衣服、体が瞬時にして綺麗になった。
「私はアークを作り、世界均衡を人間だけでとれるように仕向けた
のだが、人間に人間を裁かせるのは無謀だたようだな」
 カルティアは虚空に手を伸ばした。すると、その手にはティーカ
ップが握られていた。
「手を出せ」
 シュウがカルティアに言われた通りにすると、シュウの手にティ
ーカップが現れる。
「少し落ちつけ。そなた達にまだ裁きを下す要素は見つかっていな
い。それよりも。この男についてどこまで知っている?」
 カルティアは、そう言って自分の胸を指した。そう言われて、シ
ュウは戸惑った。
「私も、そんなに知っているわけではないのです。アークの一員で
あることと、その……」
 シュウはそう言って顔を赤らめた。流石に“体”とは言いにくか
ったようである。
「そうか……この男がアークの一員であるとは、皮肉なものだ」
「ど、どうしてです? 貴方がアークを作り、フォンシャンはアー
クの人間。どんな理由があるのかは分かりませんが、目指している
ことは一緒ではないのですか?」
「違うだろう。あの男は私を宝石に封印した。そうだな、百年ほど
昔の話しだ」
「百、年?」
 シュウは思わず聞き返した。
「そんなに永い時ではないが。百年ほど昔にも、一部の人間が戦争
と言う物を起し、大地を汚れた炎で満たした。その時の裁きのとき
だ……その時のことを思い出すと、憤らずにはいられない」
 カルティアはそう言うと、シュウに近づいた。シュウは無言で一
歩退いた。
「フォンシャンは、どうしているのですか」
 シュウはそうたずねた。
「気を失っていたようだが……目が覚めたようだ。何を考えたか分
からないが、高位生物を召喚などするからだ。しかも放っておけば
自分で帰るものを」
「それは放っておいたらディープは全てを押し流して自分の世界に
引きずりこむ神だから……」
 シュウは、カルティアに睨まれた。
「そのまま滅ぼしてしまえばいいものを」
 カルティアはシュウをベッドにまで追い詰めた。シュウの片手首
をつかみ、自分の方へと引き寄せる。
 カルティアは、そこでうっすらと笑みを浮かべた。
「人間の男として、さぞ苦痛に思うだろうな」
「なっ……」
 シュウがカルティアの言っている意味がわかったのは、ベッドに
押しつけられた時の事だった。シュルッ、と音がして、シュウの手
に何かが巻きつく。
 カルティアは無表情のまま、シュウの服をゆっくりと脱がせ始め
た。
「何を、する!」
「知ったことを。面倒だ」
 カルティアがシュウの上着に触れると、それが消えた。
「ふざけるな! 貴方は星を守る天使なのだろう!」
「それが、どうした? 体はあの男だ。気にすることはない」
 カルティアはそう言って、シュウの首筋を撫でた。
「なかなかあの男も目が高いな。いい血統だ。純真ながら気丈。そ
れでいていい体を持ち合わせている」
 カルティアはシュウの下腹部に手を当てた。
「あの男が初めてだったのか?」
 全てを見通しているかのような口ぶりだった。
「あ、貴方には関係無い……」
 顔を赤くして目線を横に逃がすシュウ。ボタンを外されたワイシ
ャツの隙間から胸部に手を入れられた瞬間に体ビクリと動いた。
「怖がっているのか。心臓の動きが少し早い」
「当たり前だ! そんな見ず知らずの男に触れられて怯えぬ女がい
るか!」 
「怯えているのか。自ら白状するとは、面白い人だ。そんなに手を
動かすな。後が悲惨だぞ」
 カルティアはそう言ってシュウに顔を近づける。カルティアの長
い銀髪が前に垂れ、シュウの体や顔にかかる。
「いやだっ! 私はフォンシャンの心が欲しい!」
 シュウは言い切って、驚いたように目を丸くした。どうやら自分
の欲望に初めて気がついたようだった。
 カルティアは小さな笑いをこぼした。が、次の瞬間、頭を押さえ
てシュウの上に倒れこんだ。
「なっ、なにをっ」
 シュウの手に巻きつけていたものが緩み、カルティアの体を退け
ようと手で突っ張る。
「シュウ……」
 シュウの顔に、ポタポタと暖かい物が当たった。
「フォンシャン?」
 青ざめた顔で、フォンシャンがうなずいた。
「首輪、持ってる……?」
 全身で大きく息をしながら、フォンシャンがたずねた。シュウは
ズボンのポケットを探りながら答えた。
「拾ってはあるが――宝石なら砕けている」
「うそ……シュウ、なんでもいいから、宝石持ってない?」
 フォンシャンはそう言って、口から血を滴らせた。
「フォンシャン!? 血が……」
「大丈夫、彼が体の傷を復元させただけだから……それよりも早く!」
 フォンシャンの瞳が黒く染まった。シュウは慌てたようにフォン
シャンの体の下から抜け出すと、すぐ隣りの家へと走った。
「シュナイザー様!? よくぞご無事で!」
 家の中では、エクサがそう言って向かえたが、シュウはエクサの
体を押し退けて言った。
「家から何か宝石を持ってきていないか!」
「え、えと、確かスプーンセットの箱にサファイアが……」
「それでいい、よこせ!」
 シュウはエクサにそう怒鳴った。エクサは焦ったように返事を返
すと、キッチンから一つの箱を持ってきた。そこにはラスタ伯の家
紋があり、ワンポイントとしてサファイアが埋め込まれていた。シ
ュウはそれを奪い、箱を床に叩きつけた。耳ざわりな音を立てて、
スプーンやフォークが床に散らばる。
 シュウは床に転がり落ちたサファイアを拾うと、フォンシャンの
もとに戻った。
「フォンシャン! これでいいのか!」
 フォンシャンはベッドの上でもがいていた。その背からは真っ白
な羽根が狂ったように羽ばたいていた。フォンシャンはシュウと目
があうと、サファイアを近くに持ってくるように手を伸ばした。
「サファイア……ありがとう、これで少しは間が持つ」
 フォンシャンはそう言いながら、魔法陣を描き始めた。魔法陣は
サファイアを包み込み、表面に何かを刻みつける。フォンシャンは
それを飾り台に押しこめると、首輪をした。
 フォンシャンの体から、銀色の光りが発せられ、部屋の中に散ら
ばったかと思うと、首輪から新たにぶら下がるサファイアへと吸い
込まれて行った。



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