アキューの冒険 リノンの受難



 どれくらいの時が過ぎただろう。
 ついに、殻のカケラがポロリと落ちた。ポロポロっと殻が落ちて、そこから小さな爪がのぞく。まだ柔らかそうな爪で、殻の縁を広げようとする。
「みきゅーっ……」
 子猫のような鳴き声をあげて、濡れた魔獣が姿を現した。
「かぁわぁいい……」
 アキューはそう言いながら卵の中から魔獣を取り出し、濡れた体をハンカチで拭く。
 段々毛が乾いて、ほわほわになる。まるで真っ白な綿のよう。
「リノンちゃん……」
 アキューは魔獣を抱いて僕を見る。
 僕はしばらく考えこむフリをした。ダメとも言えないし、なにより言う気もない。
 でもね、やっぱり考えちゃうんだ。また悲しい思いをさせてしまうんじゃないかと……
「ちゃんと育てられる?」
 アキューは何度もうなずいた。
「大きくなるよ? しかも、魔獣だよ? ずっとは一緒に暮らせないよ?」
 僕が少し意地悪にそう言うと、アキューは見を乗りだして言う。
「ちゃんと面倒見るっ! 大きくなったらちゃんと森に返すから!」
 そんな涙目で見られてもさ……僕母親じゃないから、そんな目をされてもトキメクだけでさ。
 僕は、アキューの頭に手を置いた。柔らかい髪が僕の手にからむ。
「いいよ。一緒に連れて帰ろう」
 ゆっくりと、アキューの顔に笑顔がよみがえってきた。
「リノンちゃんだぁーいすき!」
 アキューの柔らかい体が、僕の体を軽く締める。
 あーやっぱり、気持ちイ――今夜も寝るのが大変だ。

 まだ足を踏みいれていない穴から、草を掻き分け、僕と魔獣を抱えたアキューは外へ出た。振りかえってみると、森の大木の気の根にポッカリと大きな穴が開いていた。普段は低木に覆われて見えなかっただけのようだ。
 距離的には、入った洞窟の入り口よりも町に近いぐらい。これなら普段お湯にこっそり入りにこれる距離かもしれない。
 僕はそう思いながら空を見上げた。
 空には大きな三日月が出ていた。なんだか、ほんの少しだけ遠吠えをしたくなった……
 アキューは僕の隣りで、魔獣を抱えて眠そうに目をこすっていた。
「アキュー、眠い?」
「ちょ、ちょっとだけだもん」
 僕は、目が半分しか開いていないアキューの手を引っ張って、家路を急いだ。流石に、一人と一匹を担ぐのはめんどい。






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