アキューの冒険 リノンの受難



 月が天高く輝く頃、僕はようやく部屋に辿りついた。
 魔獣を抱いて眠るアキューを抱え、足で部屋のドアを開ける。ソファーにアキューを設置し、部屋の中を見まわす。
 僕の目には、深い籐のカゴが目に入っていた。洗濯物バスケットとして新しく買っておいたもので、まだ値札がぶら下がっている。中には先日着たシャツが二枚だけ入っていた。
 僕はバスケットにタオルを何枚か広げて入れると、アキューの手から魔獣をそっと離した。魔獣が手からいなくなったアキューは、そのままソファーに転がり、くーくーと寝息を立てていた。
「まったく。自分で面倒見るって言ったのになぁ」
 僕はそう言って、魔獣の頭を撫でた。魔獣は以外とおとなしく、黙って僕に撫でられていた。そっとバスケットのタオルの中に埋めてやると、少しの間場所を作るのに手足を動かしていたが、落ちついたらそのまま眠りについた。
「次はアキューだね……今から部屋まで送ってゆくのもめんどくさいしなぁ」
 僕はぼやきながらソファーに向かった。
 アキューは以外とワガママな所があるから、このままソファーで寝かしていたら、怒るだろうし……
 僕の頭に、再びしょうもない考えが浮かんできた。
 けれど、慌てて首を左右に振る。
「寝ている間になんて、そんな酷すぎるよねぇ、いくらなんでも」
 僕は物悲しいため息をつくと、アキューの腕を僕の首にまきつかせた。
「んふっ……リノンちゃん、お耳気持ちイイ……」
 アキューはそう言って、僕の垂れ耳を唇で甘噛みする。そんなことされたら、一気に体から力が抜けてしまうぅ!
 僕はアキューをベッドに放り出す形で押し倒していた。その衝撃で、アキューがうっすらと目を開けた。
「リノンちゃん、今何時?」
 僕は慌ててアキューから飛び退き、答えた。
「え、ええっと、あぅ、もう日が変わっちゃったよぉ」
 それを聞くと、アキューは眠そうな目をこすりながら置きあがって僕を手招きした。
 僕が近くに寄ってゆくと、アキューは僕に抱きつき、耳元で囁いてくれた。
「はっぴばーすでぃ、リノンちゃん。リノンちゃんが一番欲しいもの、あげるよぉ。何がイイ?」
 ちょっとあくび混じりに言われても……って、ホントだ、僕の誕生日だ。すっかり忘れてたや。昨日の朝まで覚えていたんだけれど、夜飲みすぎて、そのまま忘れてた。
「って、僕の欲しいもの?」
「うん、アキューがなんでもしてあげるよぉ」
 アキューは、あくびをしながら言った。半分かわいいけど、半分むむっと来る。でも、一番欲しいものって言ったよねえ?
 僕はアキューの唇に触れた。そして、抱き寄せて呟いた。
「アキューが欲しい。アキューの全部」
 アキューはにこーっと笑うと、目を閉じた。軽く突き出したアキューの唇に吸い寄せられるにして、僕はキスをして……

 翌朝。
 とっっても素敵な追加のバースディプレゼントがあった。
 昨日拾ってきた魔獣が、辺りに僕の服やら物やらを引っ張り出して暴れまくっていた。
 僕は部屋を見て大きくため息をつき、そしてベッドで枕を抱えて眠っているアキューを恨めしそうに見た。

END






本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース