アキューの冒険 リノンの受難


 アキューは、それから三十分して戻ってきた。手には紙袋を持っている。たぶん、さっきのことはもう忘れているだろう。嫌な事は三歩歩けば忘れてしまう、ある意味イイ子だから。
「リノンちゃん、りんご買ってきたよ。あと、はちみつパンも」
 ニコニコとしながら、アキューは僕に紙袋を押しつけた。ちなみに僕はもう洋服を着ている。男の子特有の朝の一騒ぎもおさまったことだし、問題なし。
「一緒に食べようか?」
 僕はミルクを注ぎながら言った。アキューは嬉しそうにうなずいた。  小さいテーブルに、僕とアキューの朝食が並ぶ。砂糖にはちみつを足して作られた、クナイ堂一美味しいはちみつパンに、ベーコンエッグ。それにアキューが剥いたウサギりんご。
 両手でパンをつかんで食べるアキューは、なんとなく可愛い。でも、ウサギりんごを二口で食べきるアキューは嫌いだよ……なんか耳が痛い感じがして。

 朝食を終えた僕は、アキューに手を引っ張られて、近くの森の中へと進む。アキューはどんどんと森の奥へ入ってゆく。そして、立ち入り禁止のロープが張られている場所で立ち止まった。
「あ、アキュー、もしかしてこの先にあるの?」
「うんっ! アキュー勇気あるから、こんなのへっちゃらだもーん」
「そう言う問題じゃないよー。ここから先って、確か危険な魔物ばっかりでしょ? このロープで封じてるぐらいなんだから、入っちゃダメ!」
 僕はそう言って、アキューの腕をつかんで帰ろうとする。でも、アキューは僕の手の甲をつねってムッスゥとした表情をする。
「いやっ! アキューは絶対行くの! リノンちゃんも来るの!」
 そう言って、僕の腕に手を絡ませ、胸を押しつけてくる。
「大丈夫、アキューがついてるから、リノンちゃんは怖くないよ」
「なんだかんだ言って、僕がいないと怖いくせに」
 微かに震えているのを知って、僕は言った。もう、可愛くて食べてしまいたい勢いだよ。
 アキューは見とれている僕を、いつの間にかロープの中に連れ込んでいた。別に、僕は平気なんだ。この禁止ロープの先にいる魔物とも対等に渡りあえるから。ただ、アキューを守りながらと言われたら、少し難しい。
 今からでも遅くないから、ここは強引にでも連れ戻すべきだろう。アキューに怪我はさせたくないし、怖い思いもさせたくない。
「アキュー……」
 僕が言いかけたとき、アキューは僕の腕を離して言った。
「じゃじゃーん、ここです、ここー」
 アキューはそう言って、草をかき分け、岩場に大きく開いた穴をさした。それは、どう見ても遺跡ではなかった。どちらかと言えば、自然にできた洞窟だろう。
 あ、でも待てよ。この辺は火山の地熱も来ている場所だから、温泉ぐらいは出るかも知れないなぁ。
 僕がちょっぴり呑気なことを考えている間に、アキューは一人で洞窟の中に入って行ってしまった。
「アキュー待って! 一人じゃ危ないから!」
 慌てて僕はアキューの後を追って洞窟の中に入った。






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