アシューは膝の上で眠そうに目をこすっているラグをすくいあげた。
「つまらない話だったな……」
「痛い話だったふぁ……でも、その話が本当だとして、なぜころものスガタに……ふぁあーあ」
 羽を痛めないようにと、うつ伏せにラグをカゴに入れた。指先でタオルの先をつまんでラグの上にかけ、それから答えた。
「それは私にもわかりませんよ。だが、それでよかったのでしょう。
これからは一人ゆっくりと余生を過ごしますよ」
 アシューの、小生意気な顔が、とても優しく寂しそうなものへと変わった。
「そんなの、絶対よくないと……俺は思うよ、おやすみ……賢者さま」
 ラグは、軽い寝息を立て始めた。
 アシューはしばらくラグの寝顔を見ていたが、ふと椅子から立ち上がった。
 机の上の本をいくつか退かすと、合間から一対のグローブが出てきた。右手だけに限り、大きな赤い飾り石が埋め込まれていた。そっと飾り石に触れると、中から淡い球状の光りが生まれ出た。机の上にその光は転がり、アシューは指先でそれをつついた。
「私に残ったのはこれだけの力なのだよ、ラグ。これがなくなったら、私はただの子供だ。残された力は、ゆっくりと、本当に困った人々がいたときに使いますよ」
 アシューは、光りをグローブの中に押し込めてテーブルの上に放置すると、暖炉の右奥にある扉に目を移した。普段はその扉の前に本が山積みされていて、出入りしているようには見えない。
 アシューはその本の山を足でどかして扉を開けた。何日も椅子の上でうとうとと夜を明かしていたアシューだったが、小さな客人に遠慮したのだろう。
 扉の内側には、とても小さなベッドがあった。上にかぶせられていたキルトのベッドカバーをはぐと、下からまたキルトのカバーがかけられた掛け布団が姿をあらわした。
 アシューはもたもたと青のローブを脱ぐと、ベッドの中へともぐりこんだ。そして、青のローブをも共にベッドに引きずりこんだ。まるで子供がお気に入りのぬいぐるみや枕をなどを抱いて寝るのと同じように……

 ラグは、アシューが奥の扉を閉めるのを、片目を開けて見守っていた。
 扉の奥から聞こえる物音が完全になくなってから、ラグはカゴを抜け出して先ほどアシューがテーブルの上に置いたままのグローブに近寄った。右手の飾り石を覗き込むと、ラグの小さな顔が写った。
ラグが石を数度ノックすると、中から光りが零れ落ちた。
 その光りを指先でつつくラグ。光りは、何かに反応したかのように、赤い色に鈍く光った。
 ラグは自分の身長の半分はあるかと思われる光りの球に乗るようにして抱きつい<た。
「あったかい……」
 光りの球は、ラグを柔らかく包むと、光りを弱めた……



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