十数年前から、キング・エンデガルドに話を持ちかけられて、私たちは大陸に徘徊するモンスターたちから人間を守るために、主要都市や国にモンスター避けの結界を張っていた。
 私たちには、大陸の半分を結界で守り続けるだけの魔力を兼ね備えていた。だからこそ、賢者と呼ばれるようになったわけで、その賢者様にがんばってほしいと言わんばかりに各国から金や財宝、整った屋敷などを貰い受けてきた。
 そして、十五年前、シャント大陸の南西に位置するハルツ国が、モンスターの集団に襲われた。それはエンデガルドが虚無の地に国を設立することを大陸全土に知らせた数日後のことだった。
 虚無の地から本格的に追い出されたモンスターたちは、他の結界の張られている国や町は襲えなかったのか、ハルツの国を襲ったのだ。
 賢者からの保護を失ったハルツの国は、一度に襲ってきたモンスターに抵抗することができなくなり……王都は廃墟と化し、周辺の町や村は瓦礫の山と化した。
 エンデガルドの国が建ち、ハルツの国が滅んでから一ヶ月後ぐらい、私はエンデガルドの城にいた。天蓋つきのベッドに、大きな樫の机。ペパーミントグリーンの壁紙、白の大理石の床が彼に与えられた部屋だった。床の一部には、白くて毛足の長い獣のカーペットが置かれていた。
 それが文字通りのキングになったエンデが私に与えた部屋だった。

 その時、私は大きなベッドに横になっていた。
 クイーン・レスティカが炊いておいてくれた香のお陰か、少し甘い香りが漂っていた。
 ふと寝返りを打つと……すぐ横にレスティカが笑顔で横になっていた。
「いつきたのですか」
 レスティカは、私の頬をなでて答えた。エンデと同じく、彼女も私の頬をなでるのが好きだったようだ。
「さっきよ。寝顔を見ようと思って静かに入り込んだのけれど。いつも貴方は隙を見せないのね」
「そんなことはないですよ、クイーン。ハルツの国が滅んだことは……聞きましたか?」
 私がそう言うと、レスティカの顔が曇った。彼女がハルツの国を愛していたことは知っていた。いつでも暖かく、私たちを迎えてくれていた国だった。その国をなぜ、エンデが見離したのか、納得がいかないのは、私も一緒だった。
「キングは……エンデが何を考えているか、貴方は知らない?」
 私は首を横に振るしかなかった。私には彼、エンデの意図がまったくわからなかった。見せしめほかに、何か理由があるとも思えなかった。
「そう……彼のせいでね、各国の、大陸の動きが変になっているの。
前はあんな人じゃなかったのに」
 レスティカは、とても悲しそうな表情を浮かべ、目を伏せた。私は、レスティカのエンデへの思いを知っていた。その分、彼女の表情がとてもつらそうに見えた。
 レスティカは私の頭を、自分の胸に抱いてつぶやいた。よく、彼女が落ち込んだときに、私はこうやってレスティカの胸に抱かれて話を聞いてやっていた。私は、エンデの飼い犬であるのと同時に、レスティカの人形だったのかも知れない。
 とにかく、レスティカは話というか、愚痴を話し出した。
「彼ね、やっぱりおかしいのよ。なんだってあの城を捨てたのか、そしてなんだってこんなモンスターの巣窟に城なんて構えたのよ。そんな事しなくても、私たちの力は十分証明されてきたし、これからも……」
 私はそのままレスティカに押し倒された。特に抵抗はなかった……

 アシューはそこまで話して、無駄に目を輝かせているラグに気づいた。そこまで話して黙していると、ラグはいらだったように言った。
「それでどうしたんだよ!」
「子供に聞かせる話じゃありませんよ」
「一番イイシーンじゃないか!」
 力説するラグを無視して、アシューは再度話をはじめた。例の、ラグが気にしていたシーンを大幅に飛ばして。



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