3
アシューは自分で言った通り、夢を見た。
だが、それは平穏な物ではなかった。
夢の中のアシューはやはり小さいままだった。そして、どこかの部屋に立っていた。床は大理石で、ひんやりとした空気が辺りを包んでいた。
目の前で、人が倒れていた――血溜まりに倒れており、服に血が染みこんでいる。その背には、数本の剣が刺さっていた。
匂いがしないところは、やはり夢なのだろう。
アシューは自分にそう言い聞かせた。
そして、再び血溜まりに倒れている人に目をやる。
その人は生きていた。
アシューに手を伸ばし、招き寄せる。
アシューはガクガクと震える足で、なんとか近づいてゆく。ピチャリ、と音を立ててアシューの服に人の血が吸いこまれてゆく。
「大丈夫、ですか……」
アシューはやっとのことで声をかけた。すると、血濡れた手が伸びてきて、アシューの頬を撫でた。
「大丈夫だよ……だが、私はもうもたない。お前に全てを預けよう」
アシューは、誰だか分からないその男から離れたかった。だが、体は言うことを聞かない。
「いいかい、恐がらなくていい。最初は重荷かも知れない。けれど、いつかお前を支えてくれる者が現れる。だが――決して道を踏み外すな」
男はそう言って、アシューの額に手を当てた。アシューは、他にも言葉をかけたがったが、過去の記憶であるらしく、すでに起こったのであろうシナリオは変えられなかった。
ふと気づくと、両眼から暖かい物が落ちていた。
涙だった。
涙はすぐに部屋にひんやりとした空気に涙の熱が奪われてゆく。新たな涙で暖かさを思いだし、また忘れてゆく……
「賢者さん!」
アシューは夢の途中で入ってくる喧騒に、混乱した。
「賢者さんてば! 夢見てるだろ! 起きろよ!」
「え、ラグ……」
アシューが上を見上げると、妖精姿のラグが羽ばたいていた。その近くには、ピンクの生き物に乗った妖精がいる。
「どうして……」
アシューが言うと、死体となった男がフッと消えた。
「ああ、夢妖精に頼んで、ちょっとお邪魔させてもらった。賢者さん、相当苦しそうに寝ていて、声をかけても起きなかったから」
ラグは心配そうに言って、アシューの元に降りてくる。
「心配を、かけましたね」
アシューはほぅ、とため息をつき、ラグを見つめた。
「目、覚ませそう?」
「ええ、大丈夫でしょう……」
アシューがそう答えると、ラグはニコリと笑った。
「じゃあ、待ってるから」
そう言って、ラグは姿を消した。後に残った一匹の妖精は微笑むと、手に握っているガラスの鈴を鳴らした。
チリーン……
とても繊細で、心に染みるような音色だった。
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