16


 ラグは切符を大人と子供一枚ずつ買うと、出発間近だった汽車に飛び乗った。
 向かい合わせに設置された座席に、ラグは荷物とアシューを放り出した。黒いベルベット調の椅子にアシューはムッスぅとした表情で腰かけた。
「いい加減説明してください」
 ラグは動き出した窓から顔を出してはしゃいでいる。
「おーはえー! 顔が凍りついちまいそうだー」
「ラグ」
 アシューはいささか怒りを含んだ声色で言った。
「あーはいはい、ちゃんと話すよ。俺がさっき貰ったのは、賢者さんの力がある場所の情報。温泉で聞いただろ。誰かがいまだに賢者さんの力を引きだしているって。その誰かを突き止めれば賢者さんの力は戻ってくる。妖精は力の集合体に敏感で、なおかつ人に近い生き物だからね。で、さっき貰った紙には一番近い所で感じられた賢者さんの力の場所が書いてある」
 ラグはそう言って、車内をカートを押して来たお姉さんを呼び止めて弁当を買う。先程食べたばかりだと言うのに、もう食べる準備をしている。ラグを呆れたように見つめるアシュー。
「私の、力?」
「そ。それぐらいは妖精だけで調べられんのよ。妖精は世界中に居る。その情報網は凄いんだぜ。だから風呂上がりに頼んだことがもう情報として集まってきている。これから行くのはそこ」
 ラグはそう言って、お茶をよそって飲んだ。
「そんなことができるのですか、妖精と言うのは。良いことを知りました」
 アシューはそう言って窓の外を見つめた。雪が横なぐりに吹きつけ、窓ガラスが曇っている。窓辺には雪と同じぐらい真っ白な妖精がフワついている。ラグと目が合うと、ニコリと笑ってそのまま上昇して行った。
「今のは……」
「雪の妖精だよ。人間好きなんだ」
 ラグはそう言って、唐あげを頬張っていた。アシューは「そうか」
と呟くと黒いマントに包まり、目をつぶった。それを見て、ラグが言った。
「賢者さん、寝てていいぜ。寝る子は育つって言うからね」
 そう嫌味を言って、ニヤニヤと笑う。アシューはそれにいちいち突っかかるのももどかしく、身を縮めた。
 魔動汽車は心地よい揺れと暖かさを提供する。他に乗客はほとんどなく、静かな空間が辺り支配する。子供に戻っているせいか、眠りを誘いやすくなっているようだ。アシューはしばらくして眠りについていた。ラグは小さくなって眠っているアシューを引き寄せると、膝の上に頭を乗せてやった。その数分後には、ラグ自体もくーくーと寝息を立てていた。



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