4.エピローグ

 バドは、闇の中に立ち尽くしていた。だが、どうしてそこにいるの
 名も知れぬ小さな街に、一つの居えがあった。そこには二人の男が
住んでいた。
家の玄関には、白と黒のクロスソードが飾られている。
 そこは、看板も出していない事務所。普段は診療所として動いてい
た。
 今日も白衣を来た男が、家の外で街の子供達と遊んでいる。家の中
からは、窓からそれを見つめているもう一人の男。少年と呼んだほう
がいいかもしれない。
 ふと、一人の子供が窓を見上げて少年と目を合わせて微笑んだ。す
ると。少年は窓の奥に引っ込んだ。
 その子供は、遊んでいた男の白衣を引っ張って言った。
「ねぇねぇ、バドせんせぇ。あのお兄ちゃんはどういして一緒に遊ん
でくれないのかなぁ」
 男はにっこりと笑って答える。
「あの人はね、恥ずかしがりやなんだ。それに、仕事が忙しいんだ」
 それに対して、他の子供が言った。
「でもさ、先生だって忙しいそうじゃん。何日も帰ってこなかったり
してさ」
 男は子供の頭を撫でて言った。
「まぁね。この近くには医者がいないし、その分忙しいんだ。君達は
元気でいいね、うん。僕がいらないくらいにね。とっても嬉しいこと
だけれど」
「じゃあじゃあ、もっと遊んで!」
 子供は男にじゃれつく。他の子供もそれに習い、男にぶら下がる。
まるで学校の先生と子供のようだ。男の周りを、楽しそうに走りまわ
る。
 と、一人の女の子が男の前で派手に転んだ。少女は瞳にいっぱいの
涙を溜めた。男はゆっくりと少女を起した。
「泣かないで。今治してあげるから」
 そう言って男は微笑むと、少女のすりむけた膝に手を当てた。男の
手の平が微かに光った。
「もう、平気だよ」
 男はそう言って、少女の膝から手を離した。そこには傷がなかた。
「ありがと、センセ!」
 少女は満面の笑みを浮かべると、また走り出した。
「今のこと、他の大人には内緒だよ。僕と、君達のヒミツだから」
 少女はうなずいた。と、家の中から電話のベルが響いてきた。にわ
かに男の顔色が曇る。そして心配そうに窓を見上げた。
「バド! 貧血気味の彼から電話だ!」
 少年が窓から身を乗りだし、そう怒鳴った。
「今行きます。ごめんね、急患みたいなんだ。多分遠くの子だと思う
から、またしばらく遊べないね」
 そう言う男に、子供達は笑顔で答えた。
「いーよっ、センセー、その人のこと助けてあげてね」
 子供達の言葉に、男は笑顔でうなずいた。
 男は家に急ぎ足で戻った。
「カヲルさん、また?」
「ああ。あのバカ、ハンターになったくせに仕事を人に押し付けやが
る」
 少年はそう言って男にカバンを投げつけた。
「でも、僕たちが世界を飛びまわらなくても良くなった分、文句言え
ないよ。それに、アルさんは好意をもってやっているんだから」
「おまえの為じゃなくてか?」
「カヲルの鈍感」
 男はそう言ってため息をついた。
「何か言ったか、バド」
「い、いいえ! ともかく被害者が増える前に行きましょう」
 二人はそう言って玄関へと向かった。少年はそこで足を止めた。バ
サリと白い布を取りだし、クロスソードを包む。
「そのクロスソード、相当おまえがお気に入りと見える。おまえが触
れていないときは刃が黒いままだ」
「あれっ、カヲルさんてば妬いてくれてるの?」
 男は白衣を脱ぎ、黒いマントを羽織った。少年はそれを見ていて、
呟いた。
「俺は、そっちの方が好きだ」
「えっ、カヲルさん、今なんて?」
 少年は真っ赤になって怒鳴った。
「なんでもない! モタモタするな、行くぞ」
「ちょっ、カヲル待って!」
 先を行く少年の後を、男は慌てて追った。


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