三章 6


 窓のカーテンの隙間から朝日が差し込み、車内を明るく照らした。その光りにアシューは目を薄っすらと開けた。目を軽くこすり、光りに目を慣らす。目の前にはレーヴェレスの姿しかなかった。レーヴェレスは完璧に眠りこけていた。そして小窓から見える御者台にはラグの背中がのぞいていた。
 アシューは窓を開け、そこから身を乗り出した。体を反転させて器用に車の上に飛び出ると、御者台に滑り込んだ。
「賢者さんおはよ。そろそろレッダーを降ろしてもいいよね。レーヴェレスの居た村に近づいていると思うから」
 ラグはそう言うと、雪の妖精に手を振った。小さな雪の妖精はレッダーの毛並みに沿ってふわふわと耳元まで飛んでいった。
 アシューは冷たい風に身を震わせ、言った。
「不思議ですね。声も発していないのに通じ合うなんて」
 ラグは朝日に目を細めながら手綱を握った。
「ちゃんと話してるよ。目と目、そして小さなささやきで。レッダーもそれを聞く意思があるから妖精と話ができるんだ」
 ラグはそう言って戻ってくる雪の妖精に微笑んだ。それと同時にレッダーはゆっくりと降下を始めた。雪の妖精は降下を始めると、ゆっくりとレッダーの体から離れて行き、ふわふわと空に漂った。
「彼女たちはここまで。ここから下は彼女たちにとっては暖か過ぎるんだって」
 ラグは雪の妖精に微笑みを向け、手を振った。あっという間に雪の妖精たちの姿は朝日の中に消えてゆく。まぶしさから地上に目を向けると、大木が見えてきた。その周りに白い丸が見えてきた。
「レーヴェレスがいた村でしょうか。やはり空から行くと早いですね」
 アシューはそう言うと、背後の窓から車の中をのぞき込んだ。中ではレーヴェレスがまだ眠っていた。
「やっぱり、置いていったら怒られますかね」
 アシューの呟きに、ラグが目を細めた。
「多分連れて行ったほうがいいとは思うよ。後でボコボコにされないとも限らないから。でも連れて行きたくない気持ちもわかるよ、うん。自分の力に自信がないから余計ね……」
 ラグの言葉に、アシューはため息をついた。
「そう、なんですよね。大陸を守っていた力は、今私にはない。自信だけではなく、力そのものもないですから」
 ため息交じりのアシューを乗せ、レッダーは地面に降り立った。そしてゆっくりと村へと近づいて行った。
 降りる際の揺れで目を覚ましたのか、レーヴェレスが窓をコツコツと叩いた。
「寄ってってくれるの? まさか置いて行く気じゃないでしょうね!」
 寝起きとは思えぬ威勢の良さに、アシューは笑った。
「話を聞いていたんですか。大丈夫ですよ、守ってもらうために連れて行きますから」
 そう言って口元に笑みを浮かべるものの、目は少し切なさを秘めていた。そして前に向き直り、立ち上がると御者台から飛び降りた。
 青いローブが風になびき、広がった。アシューは草地に降り立ち、前方に見える巨木を見上げた。
「そう言えばレモドの巨木を通して守っていたせいもあるんでしょうね、巨木の周りに村ができたのは」
 独り言に、ディスローダが答えた。
<そうだ。賢者の力を得て大木は巨木へとなった。まるで子を守る鳥の翼のように、日増しに大木が葉を広げていく様はとても素晴らしかった。だがそれが終わったあとのそなたの姿は……>
 ディスローダはそう言って言葉を切った。
「白髪になり倒れる私ですか。仕方なかったんですよ。エンデから力を借りれるのはほんの少し。彼は狩りに出るのが好きな力押しの人だから、魔物を千頭倒して怪我を負うことのほうを選ぶ人です。他にも各国との交渉は彼の方がうまかったから……」
 アシューが沈んだ声色で話すと、ディスローダが笑い声を上げた。
<はははは、女との交渉はエンデガルドよりアシューズヴェルトの方がうまかったように思えるがな。そなたは女の言うことを何でも聞いてくれるからな、エンデガルドと違い>
 ディスローダの言葉に、アシューは口を尖らせた。
「ディスローダ、貴方まで私をからかうのですか。しかし、エンデはまだ生きているんでしょうか。あの時のレスティカの様子を見る限り、死んだと思えるのですが」
 そこまで言って、アシューは首を左右に激しく振った。
「やめましょう、過去を振り返るのは。今は自分の後始末をつけることを急がなくては」
 アシューはそう言って、村の手前で停車したレッダーを見つめた。そしてそこへ向けて走り始めた。
 一見重たく感じられるローブの裾が空を舞い、まるでローブが風を捕まえているかのようにアシューの体がふわりと浮いた。
「勝手に発動している……」
 アシューの不可解そうな表情に、ディスローダが答えた。
<そなたのローブにも、ちゃんと力をまわしている。多分、それがそなたを前賢者と結びつける唯一の手がかりなのだろうから>
「前賢者との、手がかりですか」
 アシューは覚えのないつながりに首をかしげた。
「でもまぁ勝手に魔法を増幅してくれるのはありがたいですけどね」
 アシューは言いながら、体を横に一回転させた。そして気分が悪そうな表情を浮かべた。
「前はもっと綺麗に飛べたはずなんですけどね。どうにも無駄に体が揺れてしまうから気分が悪くなる」
 そういったアシューに、ディスローダが笑いながら言った。
<まだその体の大きさに馴染んでいないのであろう。なに、女性の一人でも抱けば感覚取り戻すであろう>
 その言葉に、アシューは一言「貴方がそんなに下品になったのも、歳月のせいでしょうか」と嫌味交じりに返した。
「貴方も子供が居るんでしたね。自分がいかに世界から孤立していたか、少し実感してしまいましたよ」
 アシューはレッダーの車にたどり着き、後ろの荷物が入っているトランク部分の扉を開けた。中にはカバンなどのほかに、剣が数本入っていた。後ろからラグがのぞき込んで口笛を吹いた。
「なかなか高そうで使い勝手がよさそう。俺にも一本頂戴!」
 そして右手を思いっきり広げてアシューに突きつける。アシューは中でも一番大きい剣をラグに渡した。その重みでラグはその場で転んだ。
「おや。意外と力がないんですね」
 ラグは飛び起きると、剣を抜き去った。
「違う。これが悪いの」
 言いながら刃に手を滑らせて行く。するとラグの手に反って刃に文字が浮かび上がった。
「賢者さんが直接貰ったものでしょ。だから他の人の仕様になってない。刻印が精霊王になってる」
 ラグはそう言って刃にまた手を滑らせた。その指先には葉で王冠を模った刻印が押されていた。
「今は亡き精霊王ライシャ。賢者さんはよっぽど贈り物が多かったみたいだね」
 ラグの言葉に、アシューは目を丸くした。
「ライシャからの贈り物……男性からのもらい物は覚えてないですね」
 アシューはあっさりと言い放った。ラグはそれを聞いた途端吹き出した。
「賢者さんらしー! って、この剣借りちゃってもいい?」
 ラグは言いながら剣を振るった。そして刃を指で弾いてゆく。
 アシューはラグの奇妙な動作に首をかしげ、言った。
「私仕様なのでは?」
 アシューの言葉に、ラグは真剣に刃を見つめながら答えた。
「俺も妖精よ? 精霊王は無意味に人に物を託さない。知ってる? 精霊王は妖精の中から選出される。だったら俺が目指してもいいんじゃない?」
 ラグは言いながらアシューの髪をくしゃりとなでた。そして剣を鞘に納めた。
「でも完全に賢者さんから解き放つには一つ足りない……かな」
 ラグは言いながら大きく伸びをしたレーヴェレスをじっと見つめた。レーヴェレスはあくびをしたところでラグの目線に気づき、口を押さえた。そして涙目で言った。
「な、なに?」
 レーヴェレスの焦った問いに、ラグはなおも見つめて言った。
「なんでもない」
 そう言って微笑んだ。そして背中に剣を担ぎ、手に荷物を持った。
「今日はレーヴェレスのところ泊めてくれるんでしょ?」
 ラグはそう言って軽く振り返った。レーヴェレスは頷くと自分の荷物を手にした。それを横からアシューが取り上げた。
「お嬢様に荷物は持たせられませんからね」
 そう言ってニコニコとするアシューを見て、ラグはレーヴェレスの耳元でささやいた。
「相当うれしいみたいだね、体が元に戻って。でもなんか子供のときより子供っぽい笑顔だよね」
 レーヴェレスはラグの言葉にうなずいた。アシューの顔は子供の時よりも子供らしさが溢れていた。少し皮肉めいた小生意気な笑顔は健在のようではあるが。
「でも、上っ面だけかもね。無理してはしゃいでるとも限らない。壊れなきゃいいんだけど……」
 ラグは聞き取れるか取れぬかの小声で呟いた。いつになく真面目そうなラグの表情に、レーヴェレスは少し何か引っかかったようで動きを止めた。
「どしたの? 早くしないと賢者さんに部屋荒らされるよ。意外と片付けられない人だから」
 ラグしか知らぬことではあるが、確かにエヴィエンドの小屋は本が出しっぱなしであり、料理後の片付けもされていないままだった。
 レーヴェレスは一瞬顔を青くした。
「ちょっ! って言うか部屋片付けるまで入らないでよ!」
 レーヴェレスは慌てて走り、アシューのローブをつかんだ。
「汚いのは気にしませんよ。一人で暮らしていると意外と面倒になってくるものですから。そもそも私にはいつもメイドか使役獣がいたもので、エヴィエンドのあの小屋での生活の最初の頃は苦労したものです」
 アシューは腕を組んでレーヴェレスのパオの前で立ち止まった。よくよく見ると占いパオの背後に大きめのパオが構えている。
「荷物は中に置いておきますよ。あ、泊まれないようでしたら宿か最悪レッダーの車の中で眠るのでお気遣いなく。一人暮らしの女性の家に泊まるにはちょっと気兼ねするサイズですからね、家の大きさが」
 アシューのちょっとした嫌味に、レーヴェレスの眼光が細く鋭くなった。自分のカバンをひったくったかと思うと、指を突きつけた。
「悪かったわね! まだ見習いビンボーなのよ! 絶対泊めないんだから!」
「では、車で寝るとしますか。まぁそのまま存在を忘れて出発してしまったらごめんなさい、ですが」
 アシューは素早く言い返した。ラグは笑顔と怒り顔の狭間で苦笑いを浮かべていた。
「この女ったらしのへっぽこハゲ賢者のくせに!」
 レーヴェレスは言うことが見当たらなかったのか、子供並の悪口を並べ立てた。大してアシューは笑顔を崩さず、答えた。
「まぁ、ハゲではなく白髪なんですけど」
 そう答えると、パオの中からブラシが飛んできた。アシューはそれを受け止め、首をかしげた。ラグがポツリと言った。
「賢者さん、そう言えば後頭部のちょっとした髪のアクセントは寝癖?」
 アシューは小さく「なるほど」と呟くと自分のカバンから鏡を取り出した。
「前より髪が短いですからね。また伸ばしますよ。子供のとき伸ばしているとどうにも女の子に見られがちだったので短くしていただけですから」
 アシューは手ぐしで髪を整え、ラグにブラシを渡した。
「貴方のその髪は万年寝癖ですね」
 一瞬アシューに言われたことがわからなかった様子のラグだが、数秒のブランクを経て怒った。
「寝癖じゃない! わざとしてるの! 人間のおねーさんがこの方がかっこいいって言った!」
 子供のように怒るラグを軽く手でたしなめ、アシューはその足を飲食関連のパオが立ち並ぶ方向へと向けた。
「飲みに行きますよ。外見は大人ですから、入れてくれるでしょう――貴方も、私も」
 それを聞いて、ラグは嬉しそうに顔を輝かせ、アシューの後を追った。


 大きなパオがいくつも立ち並ぶ一つに、アシューはラグを連れて入り込んだ。普通のバーなどと違うのは、一段高く設置された上にあぐらをかいて座るところだろう。入った店内は左右に座席が分かれ、昨日の晩辺りから居座っていたであろう連中が片隅でごろ寝していた。
「酒臭い……朝なのに!」
 ラグが少し不機嫌そうに言った。
「普通ですよ。酒場ですからね。朝ですからお姉さんのサービスはありませんが」
 アシューはラグの言葉を軽く流し、暇そうな店員を捕まえて適当にオーダーを入れた。その様子をボーッと見ていたラグは、少しため息をついた。
「賢者さんって意外とすぐ場慣れしちゃうみたいだね。高そうなレストランに居てもおかしくないのに、ここでもそんなに気にならない。偉い人なのに」
 先に運ばれてきた白濁色のグラス一杯の酒を一気に飲み干し、アシューは笑った。
「偉くなんかないんですよ、私は。自分で考えることができなかったから、ただエンデの言うことを聞いていただけ。誰が私に賢者の力を授けたのかはわかりませんが、よっぽど私のことをわかっていなかったのでしょうね。私の無責任さを」
 アシューはそう言って空になったグラスをテーブルの端に置き、また店員を呼んだ。
 ラグはアシューが適当に頼んでくれた酒を一口すすって、眉間にしわを寄せた。
「甘い! でもってキツイよ、これ!」
 むせ返るほど甘い香りと舌と喉を熱くする酒に、ラグはむせた。
「あ、お酒弱いんでしたっけ?」
 妙な敬語のアシューを見上げると、ニコニコとしながらグラス半分まで飲み干していた。
「たぶん弱くはないけど、空きっ腹にしみる〜って賢者さん飲みすぎ!」
 三杯目を頼んだアシューを、ラグが止めた。
「大丈夫ですよ。朝から二日酔いにはなりませんから。と言うか貴方もですね、レーヴェレスもなんだって危険な事に首を突っ込むんでしょうかね。私のやる気を出させるのがきっと貴方の役目だったんでしょうね。でもそれ以上は関わる必要ない!」
 アシューはそう言って空になった二杯目のグラスを乱暴に置いた。いつになく感情をあらわにしたアシューに、ラグは一口酒をすすり、不味そうな顔をしてから答えた。
「そりゃ賢者さん小さいときかわいかったから。守ってあげなきゃなーって。大きくなってもそのイメージが抜けないし、情が移ったって言うのもあるし、やっぱり賢者さんが賢者に戻る瞬間まで見届けたいって言うか……それしたらきっと俺も精霊王に近づけるんじゃないかな、って。ぶっちゃけ妖精界も大変みたいなんだ。賢者もいない、精霊王もいない。幻獣界も大変だろうし」
 ラグがそう言うと、アシューの瞳が赤みを帯びた。
<その、ようだ。竜王や幻獣王と言うのも数匹存在しておるが、その誰をもが精霊王の行方、賢者の行方を知らぬ。人の世界だ、言われるまで手助けはしまい、と思っているがそうも言っていられぬ。我ら幻獣界にも魔物の手は迫っている>
 ディスローダの声に、ラグは左右に目を走らせた。そして誰も見ていないことを確認した後、言った。
「ディスローダ? 何で?」
 ラグのひそひそ声に、ディスローダは赤眼のアシューの口から答えた。
<賢者の思考なら止まっておる。最近やたらとはしゃいでいるが、やはり賢者の力を取り戻せるか不安なのだろうな>
「それって現実逃避?」
 ラグの言葉にディスローダは首を横に振った。
<いいや。たぶんそれはもうない。この男はとてもわかりやすい態度に出る。その全てが逆だが。本当に子供なのだ、アシューズヴェルトは>
 ディスローダはそう言って瞳を閉じた。
「ディスローダ? 賢者さん?」
 ラグは目をつぶるアシューの肩を軽く揺すった。丁度良く運ばれてきた料理の香りに、アシューが目を開けた。
「なんですか、ちゃんと起きてますよ」
 アシューはトロンとした瞳でそう答え、料理に手をつけた。ラグは「ま、いっか」と呟き、料理を口に運び「うまーい!」と騒ぎたてた。


 それから数時間後、アシューはレーヴェレスに「ばっかじゃないの!」と罵声を浴びせられた。
 アシューは不愉快そうな表情でこめかみを押さえると、レーヴェレスを追い払う仕草を見せた。
「うるさいですよ。無駄に私の頭を痛ませないでください」
 レーヴェレスはパオの中で寝転がっているアシューに指を突きつけ、それを何度も震わせながら言った。
「だって、バカでしょバカ。アルキッシュ酒をグラスで三杯でしょ! しかも一気したって言う話じゃない! あれは普通賭けに負けたら飲むものなの!」
 アシューは寝返りを打ってレーヴェレスに背を向けた。
「こんなところで寝ないでよ! ってかなんでラグも止めないの!」
 ラグは背を丸め、「ごめんなさい」と小さく謝った。
「だってここは寒いじゃないですか。すごく温まりたかったんです」
 アシューはそう言って再び寝返りを打ち、立てひざをついて鬼のような形相で見下ろしているレーヴェレスを見た。そして微笑んだかと思うと、スッと手を伸ばしてレーヴェレスの首筋に触れた。そのまま手を首に回し、抱き寄せた。
 ラグは深いため息をつくと、顔を横に背けた。
「ってか、ちょっと散歩行ってきまーす」
 ラグはそう言うと、四つんばいになってパオから逃げ出した。
 アシューはしばらくレーヴェレスの唇にキスをした後、笑った。
「これで許してください。後は殴るなり蹴るなり」
 アシューはそう言いながら、手を両脇に投げ出し、無抵抗になった。レーヴェレスは無表情のままアシューを見つめた。
「本当はもっと暖めて欲しいけど、貴方は私を愛してはくれない。誰も私を愛してはくれなかった」
 アシューの細くなった瞳から、一筋涙が落ちた。レーヴェレスはため息をつき、言った。
「もう、あんまり子供っぽいことしないでよ。でもね、アシュー。愛して欲しかったらまず誰かを好きにならなきゃ。いたずらに女の子をからかうもんじゃないんじゃない? アシューだと本気だかわからないんだもの」
 レーヴェレスはそう言ってアシューの額にキスをした。アシューはそのキスをくすぐったそうにして受けると、レーヴェレスの髪を何度もなでた。
「そうですね、誰かを本気で好きになるのも、悪くはない。ただその誰かが、いつ私の前に現れるか……それよりも、私は賢者に戻らなくてはならない。だが賢者に戻った私を誰が愛してくれる……私利私欲に走った賢者を」
 アシューは止まらなくなった涙を隠すように顔を腕で覆った。レーヴェレスはアシューの前髪をもてあそびながら答えた。
「今、アシューが賢者の力を取り戻そうとしているのは何のため? 少なくとも私利私欲でなんかじゃない。レモドが危険だからしてくれてるんでしょ」
「違う、それは違う。自分のエゴのために私は力を取り戻そうとしているだけだ。無くした自分の力が勝手に悪い方向に働いている、それが許せないだけ」
 アシューは弱々しく反論した。そして上半身を起こし、今度は膝を抱えた。
「私は自分の力が悪用されるのを恐れているだけだ。取り戻したところで、またみなを守れるかどうかなんて、わからない!」
 激しく首を左右に振るアシューの顔を抑え、レーヴェレスは乱暴にキスをした。
「みんながアシューを守る。だから心配しないで。ディスローダたち幻獣だって、ラグだって私だってアシューのこと嫌いじゃないから。それどころかかわいところ知ってるから守ってあげたくなっちゃう」
 レーヴェレスはそう言ってアシューを抱き寄せた。アシューはレーヴェレスの体に手を回し、子供のようにすすり泣いた。



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