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一章 我瞳・怜騎


 我瞳は、博東国の山中腹部にある村のホテルに辿りつくと、ツインの部屋を取った。店の主人に肩に担いだ少女を渋い目で見られる。そんなことはおかまいなしにキーをひったくると、部屋に入り、我瞳は碧璃をベッドに投げだした。英媛には、あごでベッドを指す。英媛は無言でベッドの上に座りこんだ。
 少しの間沈黙が続いたが、我瞳は何を思ったのか枕を一つつかむと、英媛に渡した。枕を渡された英媛は、それをキュッと抱きしめて笑顔を浮かべた。我瞳もそれに付き合ってニッと笑顔を浮かべた。
 聖春はそんな二人のやり取りを見て、頭を抱えて呟いた。
「怜騎さん、英媛様で遊んでる……」
 我瞳は、いささか汗を吸いこんだシャツを脱ぎ捨て、答えた。
「当たり前だ。これぐらいして和まないと、俺はこのガキを殺してる」
 我瞳は英媛にタオルとバスローブを渡した。
「狭い部屋で文句もあるだろうが、前回みたいにせっかく部屋を取ったのに使用されないと悲しい。それに、今回ホテルを奮発したのは、報酬を貰えるからだ。英媛さんは、このバカガキが気絶している間に風呂にでも入っててくれ」
 英媛はうなずくと、タオルとローブを手にバスルームへと消えた。我瞳は聖春の手に数枚の紙幣を握らせて言った。
「鎮痛剤と鎮静剤を買って来い。店が空いてなかったり、売って貰えなかったらかっぱらってこい」
 我瞳の暴言に、聖春はあっさりとうなずいた。しかし、すぐに不安そうな表情になった。
「でも怜騎さん。俺がいない間にお姫様たちに手を出すんじゃ……」
「どアホ! 英媛が出たら俺が風呂に入る。女の風呂は長いと思うが、早めに帰って来いよ」
「あ、じゃあ早く帰ってきて良いんだ」
 聖春は念を押すようにして言葉を残して出て行った。我瞳は口を歪めていた。
「本当にアホか、あいつは。俺は気の合わないガキには手を出さねぇよ」
 我瞳はそう言うと、シャワーの音が聞こえてくる部屋の中で一人ボーッとし始めた。
 しばらくすると、英媛が出てきた。
「我瞳様、本当にありがとうございます」
 英媛はベッドの上に座ると、我瞳に向かって三つ指付いて頭を下げた。我瞳はその頭をなで、微笑んだ。そして、少し申し訳なさそうに言った。
「悪いが、今回はさっきの男と一緒のベッドに入ってもらえるか? いや、アイツは何かするような奴じゃないし、なにかしたら俺が絞め殺すから安心してくれ。こっちのクソガキは目が覚めたらまた逃げだして厄介な目に合う。そんな事に英媛さんを巻きこませるわけにはいかなしな。取りあえず聖春が帰ってきたら、手をつながせてもら……ぅぇっきしゅっ」
 一息ついて気が抜けたのだろう、我瞳の口からくしゃみが漏れた。体を震わせ、鼻水をすすり上げる。
「大丈夫ですの?」
 英媛の問いかけに、我瞳は首を傾げた。
「何が? しっかし、英媛さんはやたらとかわいいな。こう言うのを純情って言うんだろうな」
 我瞳の言葉に、英媛はニコニコとしながら答えた。
「そうでもありませんわ。やることはきっちりやる主義ですの」
 英媛の強気な言葉に、我瞳は一瞬考え込んでしまった。いぶかしげに英媛の顔を覗き込む。だが、英媛はいつものような笑みを浮かべているだけだった。
 そして――
「我瞳様、ちゅーしてくれないんですの?」
 と一言言った。
「おぅっ……」
 我瞳は、単刀直入な言葉に、小さく言葉を詰まらせた。
 積極的な言葉に、ためらう。だがすぐにオヤスミの挨拶としてだろう、と考えを変換し、英媛の頬にキスをした。
「欲情しちまいそうなこと、するよなー、英媛さんは」
 我瞳は頭を掻いて照れを隠す。かと思うと、カバンの中から手錠を取り出し、英媛の手首にハンカチを巻くとその上から手錠をかけた。そして、調度良く帰って来た聖春を招き寄せて――
 カシャン
「なんで俺には痛いんですか」
 聖春は、手錠をかけられた手首を見つめて呟いた。
「知るか、ンな事。俺は風呂に入ってくらー。ぜってぇ手を出すんじゃないぞ!」
「あーい。って、怜騎さんじゃあるまいし」
 聖春の返事を背中で受け、いささか不服ながらも、我瞳はバスルームに足を運んだ。


 我瞳は、服を脱ぎ、熱くなったままの体を冷たいシャワーにあてる。それからバスルームにある鏡を見ながら、呟いた。
「この瞳のせいなのか、俺の体がおかしいのは……えぐり出してしまうべきだろうか? そうでなければ、俺はこのまま」
 我瞳は自分の脳裏に浮かんだ考えにため息をつくと、頭を二、三度振り、石鹸に手を伸ばした。


 我瞳がバスルームから出てきた時には、聖春と英媛が抱きあって眠っていた。どうやら互いに抱き心地が良かったようだ。
「聖春のやつ、大丈夫か? 明日辺り股間がやばいんじゃねぇの?」
 我瞳は笑いをこぼすと、もう一つのベッド、碧璃が眠っているベッドにもぐりこんだ。
「って、せめぇ! 大の字で寝るんじゃねぇ! このクソガキ!」
 我瞳は碧璃をベッドの端に寄せると、うつ伏せになって眠り出した。



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