一章 我瞳・怜騎


 のたうちまわる我瞳の体に、英媛が手を伸ばし、触れた。
「魔力が体内で暴れているようです。我瞳様は、魔術をお使いになられるのですか?」
 英媛の質問に、聖春は首を横に振った。
「怜騎さんが魔術使った所を見たことはないから、たぶん使えないかと」
 英媛が我瞳の体をなでると、我瞳は暴れるのをやめた。
「そうですか……どうやらそのせいですわ。使われない魔力が溢れ出そうとしているのですわ。私がそのいらぬ力を頂きますわ」
 英媛は我瞳の額にかかる髪をなでる。露になった額に手をかざすと、我瞳の体が微かに光った。その光りは、英媛の手の平へと吸いこまれてゆく。
「お兄様、お名前は?」
「聖春だよ。怜騎さん、もしかして魔術使えるの?」
 英媛はにこりと微笑んで答えた。
「ええ。博東の王家の者は必ず使えます。他の国家には使える者の方が少ないようですが」
 英媛は我瞳の見開かれた目を閉じさせた。我瞳は気を失っている様子で起きあがることはなかった。
「これでしばらくは鎮痛剤ナシでも大丈夫でしょう。ですが、我瞳様の体に蓄積されてきた魔力は膨大で、なぜここまで魔力を発散させずに放置していらっしゃったのでしょう?」
 英媛はハンカチを取り出し、我瞳の額の汗を優しく拭う。その近くで碧璃が怯えたような顔をしていた。聖春はその顔を覗きこみ、尋ねた。
「碧璃さんだっけ? 大丈夫?」
 そう言って伸ばした聖春の手を払いのけ、碧璃は怒鳴った。
「平気だ、触るな!」
 その態度に、聖春はムッとしたような表情を浮かべた。
「なんだよ、その態度! さっきの怜騎さんのときもそうだった。怜騎さんは親切でやっているのに全部無駄にして! 大体逃げださなきゃ傷とかだって作らなかったのに!」
 聖春の叱咤に、碧璃は睨み返した。
「その汚らわしい手で触るな!」
 碧璃はそう言って聖春の手を今度は叩き落とした。聖春は、怒りのためか頬を紅潮させた。その背後で、ごそりと音がした。
「聖春、そのガキの事は放っておけ。傷に触る。さっさと山を越えよう。俺はベッドで死ぬほど眠りたい」
 我瞳は言いながら碧璃に近づいた。何かを言おうとした碧璃の首に手刀を落とす。気絶する碧璃の体を肩に担ぎ上げ、英媛を手招きした。
「来い、英媛」
 我瞳が手を差し伸べると、英媛は腕に手を絡ませた。
「怜騎さん……体大丈夫なんですか!? さっきまであんなに」
「もう楽になった」
 我瞳はそう答えると、大股で歩き始めた。
「やっぱ怜騎さん凄い。我瞳の名前、絶対貰いますから」
「ばーか、何意気込んでんだ。おいてっちまうぞ」
 我瞳は戻ってきたかと思うと、聖春の背中に蹴りを入れた。



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