一章 我瞳・怜騎


 我瞳は聖春が寝ている部屋に戻る。聖春は起きているらしく、虚空をヒマそうに見つめていた。
「聖春?」
 我瞳は聖春の目の前で手を振る。聖春は顔を少し傾けて我瞳を見る。
「怜騎さん、俺見ちゃいましたよ。女の子二人も。スケベ。俺が苦しんでるって言うのに」
「聖春」
「なんです?」
 我瞳は聖春の髪を撫で、言った。
「ばーか。あれが例のお姫さんたちだ。ところで傷の具合はどうだ?」
 我瞳は布団の中に手を忍ばせ、聖春の脇腹を触る。
「ふひゃっ! いたひー!」
 我瞳の動きがぴたりと止まった。
「いや? クソ、あの碧璃とか言うガキ思い出しちまった。俺の顔を二度も殴りやがって」
 我瞳はそう言いながら聖春の上半身を抱き起こし、背中にクッションを入れた。聖春はクスクスと笑い、言った。
「だから片方だけ赤くなってるんですね。それ、腫れますよ」
 我瞳は叩かれた頬を触る。触れた瞬間、口元を歪める。「冷やしてくるか」と呟き、立ちあがった背中に、聖春はもう一言付け加えた。
「それと洗濯物」
 聖春に言われ、我瞳は一瞬動きを止めた。次いで、洗濯機に駆け寄る。
「あ! ちきしょーっ! 着るもんねぇ。聖春、貸せ。そもそもてめぇが血まみれにしてくれたせいで、皮ジャンさえクリーニング屋行き」
「いいですよ。バックの中に入ってますから。でも、俺のはサイズ的に……」
 我瞳は聖春の言葉を無視してガサコソとバックを漁り、黒のティーシャツを出して……
「ぷっ……」
 聖春は吹き出し、痛む脇腹を押さえながら笑う。
「笑うな、コラ。ヘソが出やがんの」
「怜騎さんてば、セックスアピールばっちりです」
 我瞳はティーシャツの裾からちらちらとのぞくヘソを放置し、聖春のカバンを軽く蹴る。
「誰のせいだと思ってやがんだ」
 我瞳は聖春の隣りのベッドに横になる。
「でも、怜騎さんにもヘソがあったんですね」
「ンじゃそりゃ」
 我瞳はため息をついて聖春を睨んだ。
「いや、怜騎さんてば、人間じゃないみたいだから」
 それを聞いて、我瞳のこめかみがピクリと動いた。少し怒りを含んだ声で言う。
「バカ言ってねぇで、さっさと寝やがれ。明日はその傷でも、山登りだからな。あの女二人抱えて。楽しい山登りになりそうだなぁ」
 聖春は小さく「げっ」と吐き、いささか顔を青くした。文句を言おうと横を見たときには、我瞳はかーかーと寝息を立てていた。
 我瞳はベッドの上で腹を出したまま、寝ていた。
「怜騎さん、セクシー過ぎです。って言うか、風邪ひきますよー。夜寒いのに裸でうろつくわ、何もかけずに熟睡……完璧です。でもいいなぁ、怜騎さんの体。強いんだもん」
 聖春は背中のクッションを抜いて滑るようにベッドに潜り込んだ。



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