一章 我瞳・怜騎


 我瞳は、わざわざもう一室借りると、可愛らしい方の少女をソファーに置き、さらに綺麗ではあるが精神的にかわいくない少女をベッドに投げ置いた。
 そこで、我瞳は自分が上半身裸であったことに気づいた。これでは、別の意味合いも兼ねて少女に平手打ちを食らっても文句は言えない気がする。だが、過去のことをあまり振り返ることはしない我瞳は忘れる事にした。
 遅らせばながら部屋の明りをつけ、照らしだされた少女を見る。
 我瞳の動きが止まった。
 ヒダリが映しだしていた、髪の色。艶やかな黒にも似た青紫の髪。少女の着ているダボついた前合わせの黒服からは白くほっそりとした腕がのぞいていた。
 美しい、と言う言葉が似合う少女だった。
 我瞳は手をゆっくりと伸ばし、少女の結い上げられた髪をほどく。自由になった髪は、さらさらと我瞳の指を擦りぬけて行く。
 我瞳は、髪を触るだけでは飽き足らず、手の甲で少女の頬を撫でる。
 我瞳のような荒い男が触れてはならぬような、そんな感触。
 我瞳は、一瞬そんな気がして手を止めた。
 だが、そんな事はすぐに忘れ、我瞳は少女の胸元に目をやる。そして、なんのためらいもなく胸元を開けてゆく。無論、我瞳の手は止められた。少女の左手が、我瞳の腕をつかんでいた。
 少女は右手で自分の腹を押さえ、瞳を開けた。
 濃い、青紫の右目。そして、青い左目……それはまるで、左目から紫が抜け落ちたかのようだった。綺麗でいながら、少し歪な色をしていた。
 我瞳は、少女の美しさに見とれるより時間もなく、頬を叩かれた。それと共に、非難の声が飛んで来る。
「なにをする!」
 少女は露になりかけた前を合わせ、我瞳を睨む。
「何って、決まってるだろうが」
 我瞳は叩かれた頬を気にもせず、少女の腕を押さえにかかった。我瞳の強さから言うと、少女の腕が折れてしまいそうにも思える。だが、我瞳は遠慮もせずに簡単に少女の腕を押さえつけると、嫌味のようにゆっくりと顔を近づけてゆく。
 最初はかたくなな表情で顔をそむけていた少女だったが、終いには目をつぶって弱音を吐いた。
「やだやだやだやだやだぁ……」
 口に出す事によって、意地を張っていた緊張の糸が切れてしまったのか、瞳から涙がポロポロと落ちる。流石に泣きだした女を相手にする気は持ち合わせていなかったらしく、我瞳は手に込めた力を緩めて呟いた。
「ガキくせぇな……でも、俺の気は晴ねぇし、何よりもあの匂いがこのガキからしやがる」
「ガキじゃない!」
 そう言って跳ね起きる少女の胸に、我瞳は手を捻りこんだ。少女の頬が赤くなるのと同時に、目つきが鋭くなる。
「クソガキ。いくつだよ? それと名前だ。別に言いたくないんだったらいい。犯す」
 我瞳はきっぱりと言い切ると少女ににじり寄る。
「い……いやっ! じゅ、十六……名は英媛」
「ハナヒメ、ねぇ。姫っぽくねぇな、お前。けど、名前が博東の王家関係の名簿の中にあったよな」
 変なところで記憶力のいい我瞳のようだ。博東の王家・従者名簿にその名が載っていたようだ。
「な、なぜ英媛の名を知っている!?」
 我瞳は目を細めて言った。
「まぁ、一般人は知らないだろうが、世の中には王家の裏名簿っていうのがあってな。俺はそれを閲覧したことがあるんだな」
 少女の表情が険しくなり、次第にベッドの上で後退りを始める。
「貴様! 追手か!」
 我瞳は英媛を軽く睨むと、手を伸ばしてつかもうとする。と、背中に柔らかいものがのしかかってきた。
「おやめくださいな、英媛は私です。この方は一応助けてくださったのですから。まぁ、やり方としては少し乱暴ですが」
 そう言って、本物の英媛は淡い茶色の髪をかきあげて我瞳の耳に触れる。我瞳はスケベ心をくすぐられ、おとなしく椅子に腰を落ちつかせる。
「で、そっちのガキの名前は?」
 英媛を抱きよせながら、我瞳は尋ねた。すでにもう一人の少女の存在を無視している。
「碧璃ですわ。瞳の色から名を取りましたのよ」
 我瞳はニコニコと笑う英媛の頭を撫で、「アンタはいい子だな」と言うと軽くキスをする。
「なっ!」
 驚きの声を上げたのは、キスをされた英媛ではなく、碧璃(あおり)と呼ばれた少女の方だ。
「碧璃か。英媛さんよ、ゆっくり寝な。おまえにゃキスしてやんね」
「いらない! そんなの!」
 そうかなきり声を上げたのは、無論碧璃。英媛はニコニコと笑うと、我瞳を見上げて言った。
「碧璃様ったら。えっと、お名前を」
「怜騎。我瞳・怜騎だ。以後お見知りおきを、姫さん」
 我瞳は軽く笑うと英媛を離した。英媛はベッドに行くと、碧璃に言った。
「我瞳様のちゅー、おいしいです」
 我瞳の表情が、笑ったまま固まった。
「英媛! なんてはしたない! あなたはさっさと出ていきなさい! でないと、英媛に悪い影響が」
「へーへー。ま、俺が部屋とったんだがなー」
 我瞳は軽く受け流すと、部屋を出て行った。
 


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