一章 我瞳・怜騎


 我瞳は、ふと気づくと人気の少ない通りを歩いていた。目線を少し上げて遠くを見ると、女がいた。
 髪の長い女。目立つのは、長い髪を複雑に結い上げている。その背後にもう一人女がいた。夜の光でははっきりしないが、淡い色の髪をゆるいカールがかかっている。
 我瞳が呼ぶに、二人はまだ「ガキ」だった。
 そのガキ二人組みが、二〜三人の低能そうな野郎にからまれている。
「あんなガキを相手にしても面白くないだろーに……」
 我瞳はそのまま見過ごそうかとも思ったようだが――
 我瞳は右手を伸ばし、一人の男の長髪をつかむと同時に、ナイフで切り上げた。それをゆっくりと夜風にばらす。
「なにしやがんだてめっ……」
 男の声は途中でくぐもったものに変わった。中途半端な髪型になってしまった男の顔面には、我瞳の指が食い込んでいた。明らかに皮膚を貫通している我瞳の指先。
 我瞳は指をゆっくりと開いていった。我瞳の手を離れた男の体は、音もなく崩れ落ちた。我瞳は指に絡んだ血をジーパンで拭う。
 横にいた男が消えたのに気づき、振り返って我瞳を睨みつけた。
 我瞳は目を細めた。
 気分が乗らない――気に食わない。
 すぐにナイフをちらつかせる野郎が、我瞳にはとても気に食わなかった。それに、タバコの煙を吐き出しながら女につめ寄っている野郎も。  我瞳は振り返った男がちらつかせているナイフを蹴り飛ばすと、さらに足を振り上げた後、男の脳天にカカトを落とした。確かめてはいないが、割れているかも知れない。
 我瞳は最後に残った男を見据えた。
 タバコをふかしたままの男は、地面に転がっている仲間二人を一瞬見た。大して表情を変えないところを見ると、ただ潰されたと思っているかもしれない。
 我瞳は、右手を伸ばして男の口を塞いだ。
 男の目が、見開かれた。
 ミシリ、と言う音が微かにした。
「キエロ……」
 我瞳は、一文字一文字をゆっくりと吐いた。それと同時に、手を開いた。
 男がくわえていたタバコは折れ曲がり、溜まっていた煙が解放されてゆっくりと立ちのぼる。男は震えながら膝を付くと、その場から逃げだした。我瞳はナイフを投げようと腰に手をやって、自分が何も武器を持ってきていないことに気が付いた。小さく舌打ちをすると、女の方に振り返った。
「大丈夫か」
「殺すことはなかった!」
 安否を心配する言葉に対し、返ってきたのがこの言葉だった。
 我瞳は目を丸くし――次いで頬が熱くなった。
 どうやら、頬を打たれたようだ。微かにパシリと言う音が耳に残っている。
 目の前には二人の女、いや少女がいるが、どうやらそのうちの黒髪を結い上げている少女にでも頬を叩かれたらしい。
 我瞳は、頭に一気に血が昇った。
「てめぇは助けてもらったのに礼もナシかよ! その上殴るたぁ、イイ度胸してんなぁ!」
 少女を壁に叩きつけ、腕を押さえつけ、我瞳は怒鳴った。
「嫌だ! 放せ!」
 少女は暴れ、我瞳は目を細めて更に力を込めた。
「礼を言ってもらって終わりにしようかと思ったが、俺が納得いかねぇ!」
 我瞳は、横にいた可愛らしい少女に向かって言った。だが、あまり事の重大さがわかっていないのか、首を少しかしげ、微笑んだ。我瞳はそれを見て、「めんどくせぇ二人とも連れて帰っちまえ」と呟くと、髪を結いあげた方の少女のみぞおちに拳を入れた。そして、もう一方の少女を手招きで呼び寄せると、小脇に抱えてホテルへとお持ち帰りした。



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