一章 我瞳・怜騎


 我瞳は、服を着るのが億劫になったのか、全裸でシャワールームから出てきた。髪の水分をタオルで乱暴に取りながら聖春にたずねた。
「そう言えば聖春、お前の方の体平気か?」
 聖春の動きが止まった。
「見抜いてたんですね。背中、痛めてます」
「当たり前だろ。俺は八十キロ近くあるんだ。それに付け加え、落下の重さをくわえると、受け止めたお前に異常がないわけがない」
 我瞳はそう言ってジーパンをはくと、聖春にベッドにうつ伏せになるように指示する。我瞳は、聖春の腰に手をあてると、ゆっくりと触りだした。
「悪いな、聖春。このままだと将来腰痛ってやつに悩まされるかもな」
 我瞳はそう冗談交じりに言いながら、両手を重ねて聖春の腰にあてた。
 ゴキッと音がして、聖春の顔が一瞬苦痛に歪んだ。だが、すぐにほっとしたような顔をした。
「強制的に治しておいてやったから、今後に支障はないはずだ。俺が治療技術習得してて良かったな――聖春、よだれ。汚ねぇ」
「えっ、あっ!」
 聖春半開きになった口を慌てて閉じ、拭う。慌てて起き上がろうとするものの、我瞳に頭を撫でられ、身動きできなくなった。
「そのまま寝てろ。夜になったら奇襲をかける。こう言うのは早い方が良い」
「えっ。怜騎さん、もう場所を突き止めたんですか!?」
 我瞳は鼻頭を越すってうなずいた。
「たぶんだけどな。お前が寝ている間に視察に行って来る。俺の足で行けば一時間前後で行って帰って来れる。19時まで寝てろ」
 我瞳はそう言いの越すと、タンクトップに革ジャンを羽織って部屋を出て行った。聖春は時計を見上げ、「18時には起きなきゃ……目覚ましかけとこ」と呟く。しばらくして、頭までフトンをかぶって眠り始めた。
 我瞳が19時には出かけることを悟ってのことだろう。

 我瞳は三十分かけ、昨夜記憶した赤い点の場所に到着した。思った通り、そこは何かの砦であった。
 大して広くはないが、10メートルはあるのでは? と思われる大木の間には壁が作られており、中を見るのは難しい。
 我瞳は少し離れた木の上から砦を垣間見る。
「ここだな」
 我瞳はそう言って、鼻から息を吸った。
「女の匂いがする――嗅いだ事がないな。花柳の女がつける香水にはない……もっとも、この山特有の香水がなければ、の話しだが」
 我瞳の嗅覚は、一体どこまで嗅ぎわけているのだろうか?
 我瞳はしばらく砦を見つめていた。しばらく両目で見ていたが、ふと右目を閉じた。
「……中の設備は質素なもんだな。とりあえず、夜の闇にまぎれるしかないな。あんなに壁が高いんじゃ、聖春が越せるか微妙なことだが」
 我瞳は両目を開け、ため息をついた。
「でも、聖春ドジだからな……」
 我瞳は不安を口にすると、木から飛び降り、町へと戻る。

 町へ戻った我瞳はそのまま花柳町で女を買い、時間貸しのホテルに雪崩込む。一時間ほど汗を流したところで、女に腕を貸しながら昼寝に至った。
 我瞳は、17:20時に設定したコールで目を覚まし、シャワーを浴びる。すでに女の姿はない。
「どうにも花柳の女は落ちつきがねぇな」
 ボソリと愚痴をこぼしながら、我瞳はホテルを後にした。
 そして、スラム街の方へと歩いてゆく。裏通りの小汚い店で、弾丸を箱買いする。他に裏に弾倉を入れることが出来る黒のマントを一つ買う。今のところマントは黒だが、実際に使うと迷彩色になる魔法が施された物だ。
 


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