一章 我瞳・怜騎


「怜騎さんっ!?」
 喉の渇きを覚えて起き上がった聖春は、我瞳の姿が見えないこと
に気づき、叫んだ。そして、嫌な予感を覚えて唯一開いている窓か
ら身を乗りだした。
 その聖春の視界に飛びこんできたのは、双眼鏡と――我瞳怜騎の
体だった。
 ガッ ドォッ
 一つ目の音は双眼鏡がどこかにぶつかった音らしい。もう一つは、
聖春の体の上に、我瞳の体が重なった音だった。
 聖春はその我瞳の体と重なった衝撃に顔をしかめ、次いで背中の
激痛にうめいた。我瞳の重たい体を受けとめたためか、神経に妙な
支障をきたしたのか、目の前がちらつく。
「怜騎さっ……」
 胸から全ての空気が逃げていってしまったような感触に、聖春は
何度も咳込んだ。そして、我瞳の体を揺する。どこにも外傷はない
のだが……我瞳は、気絶していた。
 その後、何度も聖春は我瞳に呼びかけたが、ぐったりとした肢体
は反応する事はなかった。

    *     *

 1218時、我瞳はようやく目を覚ました。
 軽くうめき、自分がなぜ仰向けに寝ているのかを不思議に感じて
いた。いつもは目を覚ますと、枕が目の前にある。自分の癖を知っ
ているからこそ、自分の身に何が起こったのかが気になり、我瞳は
ゆっくりと辺りに目を配らせた。天井の白いクロスから、壁に目線
を落とし、そのまま横へと転がる。
 ふと、眉間にシワを寄せ、心配そうにのぞき込む聖春の顔があっ
た。
「怜騎さん、おはようございます。昨日の事、覚えていませんか?」
 我瞳は、その言葉に眉を寄せ、自分の記憶を探ってみた。
 覚えていたのは、緑の画面に写った赤い点の位置だけだった。そ
の後の記憶が、ブツリと途絶えている。
 聖春は、考えこんだまま答えない我瞳にため息をつき、言った。
「たぶん屋上だと思うんですが、落ちてきたんです。イヤな予感が
したから、窓から見たら……俺が受けとめたからいいものの、俺が
寝ぼけてたら、怜騎さん危なかったですよ」
「そうだな。ここ、四階だもんな。流石に気絶してたらヤバイ。地
面に叩きつけられて、体液脳髄ぶちまけてそうだな。俺、何かヤク
でも打たれたか? 聖春、俺の体調べろ。野郎のケツなんざ見たく
ないだろうが」
 我瞳はそう言って聖春を見つめ、“イエス”の答えを待った。聖
春はしばらく我瞳の体を見つめていたが、ため息をついてうなずい
た。我瞳はそれを見て、自分のベルトに手をやった。
 聖春が見た限り、上半身には注射の跡などは見られなかった。残
るは我瞳の下半身。見えない部分に注射されたり、粘膜から摂取し
たりと、様々な方法はあるが……
 が、そのどれも摂取した形跡は見られなかった。
 我瞳は、不快な表情を浮かべつつ、シャワーを浴びに行った。た
ぶん、今ごろは自分の不摂生を反省しているだろう。
 残された聖春は、背中の痛みに顔をしかめつつ、手を念入りに洗
っていた。



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