一章 我瞳・怜騎

 1 大陸

 数多くの帝国が存在する大陸。そのため、傭兵と言う仕事がとて
もさかんだった。
 その大陸には、その傭兵を育て、送り出す設備として『透羅』の
名がある。
 透羅は、傭兵を育てるだけではなかった。自分たちの仕事を邪魔
する連中を――それが例え国の王であろうと、また国その物でも削
除する。
 そうした経歴の中で、透羅はその名を確実に浸透させていった。
見えぬ、透明なる蜘蛛の糸を大陸に伸ばしていった。
 それゆえ、透羅の名は、世間に『凍羅』と皮肉にも呼ばれること
がある。その傭兵として育てられた者は、心を消されると言われて
きた。
 だが、本当に心は消し去れる物なのだろうか……


 2 博東国(ハクトウ)

 大陸の東の端、博東国。そこより山を挟んで少し西に位置する国、
兵智(ひょうち)。
「るせぇ! こらぁっ」
 その声と共に、バン、と言う足を踏み鳴らす音がする。次の瞬間
には投げつけられたテーブルが木片と化して床に散らばる。
 それと同時に、コップがガラスの破片となる。破片はさらにその
場に居た多数の足によって更にこなごなになった。遅れて、カード
がヒラヒラと舞って床に散らばる。
「俺がいつイカサマをしたって言うんだ、こらっ! 土下座して謝
りやがれ!!」
 テーブルを投げつけた男は、そう言うやいなや、側に居た野郎の
顔面に回し蹴りを叩きこんだ。画面を潰されて倒れこんだ野郎の腹
に足を捻り込む。野郎の腹に歪んだ足型がつき、その時には殴りか
かってきた違う男に蹴りを入れていた。
 更にもう一人の男の拳を受けとめて膝を腹に入れた後、あごを蹴
り上げた。のけぞる男の胸板にカカトを落とし、次の瞬間には立ち
あがってきた男の鼻に肘を打ち込んで潰す。その男は鼻血を吹いて
その場に転がった。
 喧嘩に乗じて殴りかかってきた奴に足払いをし、相手をうつぶせ
に引きずり倒すと、後頭部に足をめり込ませた。すでに店の中は、
一人の男対、店の全員となっていた。
 しばらくの間、店の中は騒然となった。

「終わりかよ。今後俺の事をイカサマ呼ばわりするんじゃねぇ! 
それ以前に俺の前に姿見せるんじゃねぇ!」
 男は、もう殴りかかってくる奴がいないことに気づき、一番最初
に潰した、イカサマ呼ばわりした野郎の胸板を掴んで引きずり起す
と、そのまま壁に投げつけた。
 そして、唾を吐き捨てて酒場を出て行った。

 男は、血に濡れた白いシャツを不快に思いながら街の表通りに出
た。白い、と言ってもすでに砂簿こりで汚れていて、白いとは言い
がたい。
 人目があるため、流石に路上では脱がなかったが、安ホテルに入
り、階段を上る途中で脱ぐ。安ホテルは、長期滞在用であり、黄ば
んだクロスがある意味の格式の高さを物語っている。
 男の部屋の中は、幾つもの酒ビンに、未使用のゴムがテーブルの
上に散らばっている。近くに置かれているゴミ箱の中には、言わず
とも使用済みが幾つか捨てられている。
 男は勝ち取った掛け金と、気分を害した慰謝料として奪ってきた
札束とをベッドの上にぶちまけると、シャワールームに足を運んだ。
 男からは、汗くささと血生臭さが混じって、臭い。
 男の胸を湯が伝う。その胸には、ドッグタグが下がっていた。
 レキ=ガトー
 我瞳・怜騎、傭兵である。
 青みがかった茶髪に、右の青い目。左は紫と言う奇妙な色の取り
合わせだ。ドッグタグには歳が19と刻まれている。身長190台
に届きそうな長身。体格は19歳と言う若さからは想像しにくいほ
ど発達している。
 体格の良さと、若さから女と言う快楽をよく知っているのだろう。
 外見では小年とは言い難いが、心はどうか? と言うのならば小
年なのかもしれない。自制が効かないのだから。
 我瞳はシャワーを浴び終え、タオルで乱暴に頭を拭きながら出て
きた。ベッドの上にある札束を適当にまとめてサイドテーブルの上
に乗せると、ベッドの上にうつぶせになり、すぐに眠りについてし
まった。
 次に我瞳怜騎が目を覚ましたのは、20時調度の事であった。そ
の数秒後に部屋をノックする音。
 我瞳はまだ生乾きの髪をかきあげ、起き上がってドアを開けた。
 足の長い、綺麗な女が入ってきて、我瞳の首に手を回すと同時に
足を絡めて唇を求める。我瞳は女を抱き上げ、ベッドに運ぶと、そ
のまま押し倒した。
 少し荒々しく、むさぼるように女を抱く……



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