1 プロローグ 4


 突然、全ての牢屋の戸が開いた。そして、牢の中から軍兵が……
「ありゃりゃ、道理で楽にことが進むはずだぁね。仕組まれてたん
だから。ということは、シュウくんも、偽者?」
「いや、私は本物だ」
「でも、偽者でもそう言う可能性はあるよねぇ?」
「それについては、特に異論はない」
 特に意地になった様子もなく、フォンシャンの背中から返答する
シュウ。フォンシャンはかわいらしく笑って言った。
「あはっ、ないんだぁ。どっちでもいいけどさ、匂いが美人だって
言ってるから」
 時折、フォンシャンの嗅覚は一体どのような構造になっているの
だろう、と思われることがある。
 そんなふざけたフォンシャンを見据える軍兵の中で一人だけ軍帽
をかぶっていない一人が言った。
「重罪人を逃す手助けをする貴様も、罪人逃走行為介助行為で同等
の処罰を課す! 前後囲まれてはどうすることもできまい、観念
しろ!」
 軍兵の言葉に、フォンシャンは首をひねった。そして、肩越しに
シュウにたずねる。
「あのさ、彼の言っている意味が良くわからないんだけれども?」
「貴方はあまり賢くはないようですね。私のような、この国にとっ
て罪人とみなされるものの手助けをしただけでもその罪人と同じ罪
・処罰が下される、ってことです」
 シュウはそうあっさりと言い捨てた。
「あら、簡単に言っちゃってくれるのねー。べつにぃ、シュウ君と
一緒ならいいんだけどさー。なーんちゃってぇ〜僕ってばかわいい
こと言っちゃった♪」
 フォンシャンはキャハハハと笑いながら体の前で腕をくるくると
回す。
「気持ち悪いな、キサマ。さっさとそいつを降ろせ。そもそも、そ
んな格好ではまともに戦えまい」
 男はそう言うと、フォンシャンを見下したかのような表情を見せ
た。それに対しフォンシャンは、いたずら気に笑った。
「本当に、そう思う?」
「どういう意味だ」
「あのさ、普通は侵入者を逃がさないために警報鳴らして結界張り
巡らすよねぇ? でも、以前から使われていないこの地下牢にはそ
んな魔法は施してないよね」
 フォンシャンはそう言って、右手を体の前に突き出した。先ほど
まで腕をクルクルと回して照れた様子を演技していたのだ、術を練
り上げていた為だったようだ。
 軍兵はそれに気づいたのか、慌てたように言った。
「ま、まさか! キサマは空間を跳べるのか!?」
 ニッ、という笑いを残してフォンシャンは一歩前へと進み出た。
 途端に、シュウを担いだフォンシャンの姿が消える。
「そ、外に逃げたぞ!! 追え! 追え!」
 一気に軍兵たちが地下牢から外へと出て行く。
 ドタバタと言う騒がしい足音が地下牢から遠ざかり、静けさが戻
った。
「意外と簡単にだまされるのね。元から結界が張られていたら、っ
てことを考えたら簡単に跳ぶ事はできないもんね」
 消えたはずのフォンシャンが、姿を現した。
 どうやら先ほどの術は転移魔法ではなく、姿を消す魔法だったよ
うだ。普通の魔法を扱うものには、三つある。一つは音声を発して
扱う魔法、二つ目は何か物を媒介して行う魔法、そして三つ目は指
先から魔方陣を描いて発動させる魔法だ。
 どれが一番強い、とか、どれが一番使い勝手がいいか? といわ
れると、それは術者各々の答えは違ってくるだろう。
 フォンシャンは、シュウを担いだまま、再び目の前に大きな円を
書いた。手早く術を発動させると、円の中へと飛び込んだ。



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