1 焔・散る 2

「なに、ここ」
 オレは思わず唸った。
 さみぃ。超さみぃ。めちゃくちゃ寒いーっ!
 オレの目の前に現れたのは、ユキヤマ。突然現れたわけではないが、 寝ていて起きたら目の前にこれだ。
 バカにしているのでは、と思えるほど辺りは真っ白で寒い。吐く息 が白くなる。
 オレを乗せていた奴は、小さく笑った。
「お姫様殿は寒いのが苦手なようじゃの。我はそうでもないが、ほれ、 もっと密着するとよい」
 奴はオレを馬から降ろし、マントの中に入れてくれた。奴の体は相 変わらず暖かく、心地よい。
 だが、オレはイライラしっぱなしだった。それでもやっぱり寒いの だ。そんなオレの心境を無視して、討伐隊は進んだ。なぜ馬が山を登 れないのかと、オレは心底嘆いた。

 オレの我慢が切れそうになった数時間後。ようやく雪の寒さにも慣 れて来た頃だった。目の前に、ポッカリと洞窟が穴をあけていた。
「おお、まだ開いておったか。凍えて閉じてしまったかとも思うとっ たが。行くぞ、姫様殿。他の者達の半分はここに残ってもらおうかの う。閉じ込められたら、困るからのう」
 奴はそう言って、討伐隊に指示を出した。この隊のトップであるこ とに、代わりはないらしい。
 なんか、ようやくオレは若さと言葉使いに慣れて来たところだった。 とは言っても、姫様殿、と言う妙な呼び方には慣れないが。
 そんなことを思いながら、オレと奴とは洞窟の中に入った。途端に、 パキン、と言う音。
「さぶーっ!!」
 見に拭きつけたとんでもない冷気に、オレは小さくなった。
「あっれー閉じ込められちゃったねぇ、僕ら」
 オレがその言葉に振りかえると、洞窟と外の境目が、全体的に光る。 氷の壁のよう。
「うだあああああ! なんだよこれっ!」
 オレは思わず叫んでいた。
「氷の障壁。触ると手が張りついて、無理やり剥がすと血の手形がつ く」
 拳を叩きつけようとしたオレの腕を引き寄せて、奴が言った。どう してそこまで冷静なのか、オレにはなっとくが行かなかった。
「ま、閉じ込められてしまったからにはしょうがない。この奥にいる 元凶をなだめればなんとかなるさ」
 あまりの冷静さに、オレの方が熱くなりそうだった。それをなんと か堪えて、オレは言う。
「それもそうだな。で、お前の名前は」
「またその質問。一応答えておこうかな。この寒さの原因を知ってい る者。名前は――ホント、勘弁して」
 そう言って、奴は顔を赤らめた。あんまり自分の名前を気に入って いないのかもしれない。でも、そこまでして言いたくないとはな。
「あら、信じてくれてない顔」
「名乗れないのは、人様に言えないような悪いことをしてきたからじ ゃないのか」
「そんなー。でも、キミだって名前を教えてくれてない」
「そうだったか? オレは炎我」
 オレがあっさり名を名乗ったもんだから、奴は慌てている。そして、 困ったような笑顔を向けた。
 だが、こんなことで時間を食ってる場合じゃない。オレはこの寒さ から逃れたいんだ!
「寒そうだから、早めに行こうか」
 奴はオレの表情を読んだのか、オレの手を引いて歩き始めた。
 歩くたびに奴の長髪が波打つ。ツヤツヤとしたその髪に、オレは少 し嫉妬した。






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