歴史と言う風

薄暗い土に囲まれた部屋で、男はランプの明かり一つで壁に向か
っていた。部屋と言うより、洞窟といった方が正しいかも知れない。

 埃やカビ臭さから守るためか、顔と髪に白い布を巻いている。と
は言え、その布ももとは白かったのだろう。今は土埃で少しくすん
だように見える。

 男は、コツコツと音を立ててノミで丁寧に壁についた土をそぎ落
とす。
 しばらくしてノミをフデに持ち代えて、壁をさっと撫でる。

 何時間も男はその作業を続けた。大切な先人の遺産を壊さぬよう
に、慎重に、ゆっくりとしたペースで仕事を進める。数時間に一回、
男は口周りから布を取り除き、水分を補給する。

 そんな発掘作業が、何回繰り返されただろうか。
 男は一つの大きなため息をつくと、最後の仕上げとばかりに、壁
をフデで大きくなでた。すると、下から文字が現れた。そして、命
を得たかのように、壁に刻まれた文字がキラキラと輝きだす。
「これは……」
 満ち溢れる光りに、男は軽く目をつぶった。

 男は、狭く暗い穴倉から顔をのぞかせた。辺りはすでに太陽が昇
り始めていた。男は草原の上で大きく伸びをすると、歩き始めた。
そして、土の上にのぞいている崩れた岩壁に座りこんだ。

 そこは、男にとって、歴史を肌で感じられる、とても好きな場所
のようだった。男はしばらく岩壁を撫でるようにしていた。
「太陽はいつだって歴史を見てきた……か」
 ふと、男はそう言って、頭と顔を覆っている白い布を取る。それ
と同時に、朝の光りが差し込み、風に布が流された。
 男はまだ若く、地中に埋もれている岩壁などを相手にしている歳
ではなさそうだった。
 だが、その顔は晴々としており、太陽が更に明るく輝かせた……


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