5.エピローグ


 いつもと変わらぬ朝。
 カヲルは机に足を乗せ、新聞を広げる。その前にコーヒーが置か
れた。
「小さく記事になってるぞ。俺はヴァンパイア・ハンターじゃない
んだがな。見るか?」
 カヲルはそう言うと、コーヒーを置いた主、バドに新聞を渡した。
「別に名前が出ているわけでもないのに、自分が加担した事が新聞
に載るって結構恥ずかしいものですね」
 バドは微笑むと、新聞をたたんでカヲルに渡した。
 カヲルはバドを見上げて目を細めた。
「おまえ、白が似合うな」
「ありがとうございます、ご主人」
 バドは照れくさそうに笑った。
カヲルの言葉には訳があった。
 バドは今、黒いスーツ姿にマントではなく、白衣を着ている。
バドが白衣を着ている訳は一つだった。今から三日前、ヨーロロン
ドからの帰りがけに、バドは“医師”になると言ってカヲルと分か
れた。それに対し、カヲルは非常に怪訝そうな顔をし、理由を尋ね
たが、「帰ってから話しますね」と言って答えなかった。
帰ってきたときには、大学入試のための資料を山ほど抱えていた。
カヲルはそれを見て思いっきり目を細めて「おまえ、年いくつだよ」
とため息混じりに言ったのだった。そして再び理由を尋ねると、バ
ドは伏せ目がちにこう答えた。
「だって、ご主人ってば、怪我ばっかり作るんですよ……人前で唇
寄せて治すの怒りますし……」
 そう言われてカヲルが始めて顔を赤らめたのが二日前。
 そして昨日、何を思ったのかカヲルはフラリと出かけ、帰ってき
た時には紙袋を持っており、「祝いだ、合格しなかったら覚えてお
けよ」 と、祝いの言葉と共に投げ渡したのだった。

 こうして今に至る。
 カヲルはコーヒーを飲みながら、ふと思い当たる節があってバド
にたずねた。
「そういやアルに植え付けたままの印はどうした?」
 やや間があった。
「……あっ。忘れてました。でも、弊害はないはずですよ。多少馬
鹿力になって多少朝が弱くなるだけです」
 バドが言い切るか切らないかのところで、電話が鳴った。
 カヲルは素早く受話器をとり、不機嫌そうに怒鳴った。
「はい、事務所! なに? 殺人事件を手伝えだと!? だから俺
は……! で、すぐに行くから場所を言え!」
 カヲルはメモをとると、いつものように電話をたたき切った。い
つもの通り仕度を初め、ふと動きを止めた。
 くるりとバドの方に向き直って言った。
「おまえも来るか?」
「もちろんですよ。相手がヴァンパイアであれば専門家と、荷物も
ちがいた方が便利でしょうから」
 バドはそう言って白衣を脱いだ。

 THE END……




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