3.一千年の悪夢_4


 ジェグシティ・深夜。
 外出禁止令が出ているとはいえ、夜の繁華街から人を追いやるの
は到底無理である。多くの人々が数ある店に出入りしている。通り
には娼婦や男娼が立つ。
 その繁華街を、一人カヲルが歩いていた。いや、その後からバド
がふらふらとついて歩いている。
 カヲルはふと足を止め、バドの方を振り返った。思ったより後ろ
にいたらしく、カヲルは辺りを数度見渡した。人ごみからやっとバ
ドが顔を出してカヲルの前に立った。
「寝ていなくていいのか? 一日寝ていたとはいえ、つらかろう」
「平気です……」
 バドの声は、人々の喧騒に半ばかき消されていた。
「そうか? それならいいんだが。それにしても、ここまで人が多
いと探し出すのは至難の業だな……おっと」
 人にぶつかられ、よろけるバドを、カヲルが支えた。
「あんまり俺に世話をやかせるな。俺は自分のことで精一杯で、貴
様のことなんざかまっている暇はない」
「ごめんなさい……」
「謝るな! 俺は男らしくないのは嫌いだ。今日はもう引き上げる
としよう。人が多い上に、探す地域が広すぎる。アキラに頼むのは
シャクだが、アキラも駆り出して捜索にあたろう。アルにも言って
おかないとな、もっと捜査陣を増やすようにと……」
 カヲルは、そう言うと、ライトアップされている巨大ビルを目指
して道を戻り始めた。

 ホテルの部屋に戻ると、リビングルームでアキラとハイネが重な
りあっていた。
「何してやがんだ! ベッドでやれ!」
 ヒステリックに叫ぶカヲル。
「おんや。帰ってきちゃったのね」
 アキラは、口から滴る血を手の甲で拭って上にいるハイネをどか
した。ハイネは乱れた胸元を直し、バスルームへとゆっくりと去っ
ていった。
「くそアキラめ!」
 カヲルはそう言うと、ソファーからクッションを一つつかむと、
アキラに投げつけた。そして、乱暴にタンスを蹴り、ベッドルーム
の扉を乱暴に閉めた。
「あ〜あ……カヲルさん、怒ってしまわれました。同じ顔をしてい
るのに、やることが全く違うんですね」
 アキラはタバコを手に取ると、火をつけた。そして、通り過ぎよ
うとするバドの袖をつかんだ。
「言ってくれるね。一つだけ誤解を解いておこう。誘っているのは
ハイネの方だよ。そう言えばバド。俺が言ったこと、さっさと実行
してしまってくれ」
「……できませんよ、そんなこと」
 バドは苦笑いをして、袖を持つアキラの手をやんわりとはずさせ
た。
「それでは、今度こそお休みなさい」
 アキラはバドの後姿を見送り、タバコの煙をゆっくりと吐き出し
た。
「ダメ男だな、ありゃ。素質はあると思うんだけどなぁ」
 アキラはそう言って笑った。



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