Emperor 1章 魔力は最強、されどバカ女


1.いびつ。

 
   大抵魔術や魔力に長けている人間と言うのは、知能が高く賢いとされている。
 そう、普通は。

 狭い部屋に、ベッドとバストイレつきという安宿の一室に、十四ぐらいの小娘と、ペットと見られる耳の長い四足の動物が存在していた。
ピンクに近い赤い髪を、頭の高い位置で二本に結んでいる。髪質が癖っ毛なのか、ふわふわと巻かれたようにはねている。青く大きな瞳は曇りひとつないほどに澄み切っており、印象的だ。
 少女は、丸くかわいらしい顔つきをバスルームにある鏡に映しながら身支度をしている。
(女だったとは、誤算だったな)
 朝の女の身支度の長さにため息をつきながら、彼女の中の者が言う。
「そう言われてもベリー困っちゃうもん。お胸もちゃんと出てきたしー。でも、普通もっと早く気づくよぉ? それとー」
 そう言って彼女はキャミソールの上から自分の胸に手を当てる。確かに豊かな胸元がそこにある。
(それから先は言ってはならんぞ)
「だってーそろそろー」
(下らぬことを言っていないで、さっさと仕度を終えぬか)
 いらいらしたような声。
「終わったよぉーだ、シーちゃんおはよー」
 ベッドの上でうとうととしている耳の長い獣を小突く少女。
 シーと呼ばれた獣は、大きく伸びをしているところを少女に抱き上げられて、腹や顎をなでられ、少し不満そうな顔をした。
(耐えろ、シーザ。このバカには何もわからん)
「またバカって言ったー。ルーク・ベリーって名前、ちゃんと自分でつけれたもん!」
(私の名前はルクドリア・ファートウッドだと、何度言ったら覚える! 人の名前を縮めるな!)
 ルクドリアはそう言ってベリーを文字通り頭ごなしに怒鳴った。
「だってルーくん縮めないと言いにくいんだもん。それに、ベリーは、ベリーだから、ルーク・ベリー」
 少女の言葉を聞いて、ルクドリアはため息をついた。
 ここまで脳味噌が熔けているとは思わなかったのだろう。
 ルクドリアが、ベリーと名乗る少女の体をのっとってから、すでに4年の月日が経っていた。
 とはいっても、現段階からすると乗っ取っているというとは言いがたい。なぜか守護霊、どちらかというと、背後霊としての地位にルクドリアはあった。なぜか完全にベリーの体を乗っ取ることができないのだ。かと言って離れることも出来なくなっていた。
「おっ仕事、おしごと〜」
 下着の上からボディラインがはっきりと出てしまうぴったりとした黒のシャツを着、短めのヒラヒラとしたピンクの花びらのようなスカートをはく。
(その服の趣味、何とかならんか?)
 ルクドリアは、鏡の前で自分の背面の見え方を気にするベリーに言った。前屈でもしてくれれば、下につけている可愛らしい下着がが見えるだろう。
 ベリーは鏡に向かって思いっきり舌を出すと、言った。
「やだよ〜ルーくんが言う服って、いつも長いし、おっきいし、動きづらいんだもん」
(動きやすさなど、魔力の高い私には必要ない。それに、夜にその服装では……)
 ベリーはたいしてない荷物をまとめながら答えた。
「寒い? ルーくんオヤジ?」
(360年も生きていれば、多少はオヤジと呼ばれても致し方ないかも知れん。もう勝手にしろ)
 ルクドリアはそう言ったきり黙ってしまった。
 その間にベリーは宿をチェックアウトし、街中を進みはじめた。








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